「職人を生きる」(鮫島敦)

「やらされている感」からの脱却

「職人を生きる」(鮫島敦)岩波ジュニア新書

「やらされている感からの脱却」
私が子どもたちに
口が酸っぱくなるほど、
今、訴えていることです。
近頃の子どもたちは立派だと思います。
なぜなら悪いことをしないから。
でも、勉強もしません。
宿題など、言われたことはやります。
しかし身に付きません。
中学生の学力が全国上位の本県の、
その平均以上の本校ですらこの有様。
日本全国津々浦々の中学校では
一体どうなっているものやら…。

そんな子どもたちに
活を入れてくれそうなのが
本書「職人を生きる」です。

ここでいう職人とは、
親方なり師匠なりに
指導を乞いながら腕を磨いていく、
子弟制度の残る
伝統工芸等の専門家を指しています。
軟弱な子どもたちに
げんこつを食らわせるような言葉が
随所に並びます。
「自分で勉強して問題を解決し、
 日々成長していかなければ、
 これから先、
 職人として生きていくのは難しい。」
「起きるのは
 だいたいいつも二時半で、
 寝るのは
 夜十一時~十一時半ですね。
 入った当初からずっと
 この姿勢を通しています。」

「職人とは、
 仕事場に人が十分前に着くのなら、
 三時間前に行き、
 そして三時間後まで働くものだ。」

こういう記述が並ぶと、
「ああ職人って大変なんだなあ、
ボクはサラリーマンでいいや」
という声が聞こえてきそうです。

しかし、本書は
職人紹介の本ではありません。
職業人としての生き方の書、
いや「人生指南の書」なのです。

本書で職人の方々が語る内容は、
現代の労働基準法の考えからすれば
割に合わないことです。
しかし、要は「やらされている」か
「自らやろうとするか」の
違いなのではないでしょうか。
仕事は「自らやろう」としなければ
本物にはなりません。
職人であってもサラリーマンであっても
その部分は同じだと私は考えています。
「やらされてる感」から
いかに抜け出すかなのです。

「己の腕を上げて、年齢を重ね、
 さらなる精進を重ね、
 昨日よりは今日、
 今日よりは明日と日々腕を磨き、
 一歩一歩前に進んでいく」

全てに通用することです。

中学生、高校生に
ぜひ薦めたいと思うのです。
そして読んだ後に対話をしたいのです。
「キミはどんな生き方をしたい?」と。

追伸。
職人を取り扱った書籍の多くは、
職種別に執筆されたものが
多いようです。
本書はそうではなく
「弟子入り」「修業」「独立」といった
「職人の歩み」にしたがって
書かれています。
読み手の興味を
引きつける構成となっています。

(2018.11.16)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA